音楽で不安を和らげることは出来るのか?
人生を歩んでいると、
元気な時は気にもとめないが、
体調が悪くなると不安になり、急に健康に気をつけるようになる。
手術をうけるような病気の時はなおさら。
大きな鉛が心の上に落ちてきて押し潰されそうな
不安に襲われる。
2011年、私は6時間かけて全身麻酔手術をした。
不謹慎かもしれないが、
その時に実験した「不安を和らげる音楽の力」について、
以前ブログやエッセイなどで紹介したのですけど、
同じような不安な体験をする人もいると思いますので、
参考までに紹介します。
2010年某日、
目の奥に激痛が走り、
睡眠中に呼吸が出来なくて目が覚める症状がでた。
医者には、
鼻柱隔湾曲、慢性副鼻腔炎、ストレス、アレルギー、
が原因と診断された。
セカンドオピニオン、サードオピニオンの診断も同じで、
薬を一年間投与したが結局治らず、遂に人生初の全身麻酔手術を受ける事になった。
手術は、前日入院し、翌日の13時スタート。
当日の朝食、昼食はなし。
12時頃には、手術服に着替えて、点滴をし待機。
しかし、前の人の手術がおしていて、
手術が1~2時間遅れると伝えられた。
というか、
イベントのライブのように手術の時間がおすってあるんだ・・・。
待ち時間の分だけ不安が重くなる。
ただ、ある程度こういう状況は予想していたので、
いろんなタイプの曲を入れたiPodを持参していた。
というのも、音楽には心を落着かせる作用があるのを商売柄知っていたので、
せっかくの機会だし自分で詳しく実験してみようと思ったのだ。
変な時に、ミュージシャン根性である(笑)
さて手術まで、あと3時間。
手術前に検証①ブルース
ベッドの上でまずヘッドホンから流れてきたのは、B・Bキング。
う~ん、あまり落着かない。
次はジミヘン。
手術前に検証②ジミヘン
う~ん、これもちょっと違う。
やはり
「チョーキングのキンキンした音」や
「ブルージーなギター」は
弱った心に、ちときつい。
元気な時に聴いてこそなのだろう。
次は、ジョン・コルトレーン。
手術前に検証③ジャズ
そして、マイルス。
ジャズのインプロは、
緊張感で聴かせる音楽でもある。
手術前で十分緊張しているので、
余計に心をそわそわさせる。
早送り。
次は、
マーヴィン・ゲイの「Let’s get it on」
手術前に検証④マーヴィン・ゲイ
少し落着く。
ボブ・マーリーの「Three little birds」
手術前に検証⑤ボブ・マーリー
少しハッピーな気分。
ナット・キング・コールの「Smile」
手術前に検証⑥ナット・キング・コール
ビロードの声が
落ちた気持ちを優しく包んでくれる。
この辺は大方予想通りだけど、
やはり良い。
次にオルゴールで奏でた「パッヘルベルのカノン」
手術前に検証⑦オルゴール
天使が闇に落ちた心を明るく照らす。
さすが、心を落ち着かせる下降旋律の決定版。
かなりイイ。
極めつけは、
フジ子・ヘミングのピアノ・アルバム「La Campanella」に収録されている
「Nocturne No.2 in E flat major Op.9-2(F.Chopin)」
手術前に検証⑧フジ子・ヘミング
嵐の海が突然晴渡り、荒波が漣へ落着くように、
彼女のピアノは一瞬で心に平和をもたらす。
これは凄い。
ブルースが好きで、
3年間アメリカで生活してまでギター修行をしたのに、
まさか、ピアノの曲で心に平和が訪れるとは。
何か魔法の力でもあるのだろうか。
そうこうしていると、遂に手術の時間になった。
点滴をつけながら、エレベーターで手術室がある階まで移動。
なんだか、ライブ前のような感じがする。
ちょっとお腹がぐーとなる。
人間はどんな状況下でも腹がへるようだ。
手術室は、テレビや映画でみるような光景とだいたい同じ。
手術台は電気毛布で暖めてもらっていたので、
横になると案外気持ちがいい。
全身麻酔を口にあてがわれ、
「最初少し咳き込みますけど、すぐ収まりますから大丈夫ですよ」
と、医者に言われる。
頭の中で「あ、本当だ」と思った瞬間、
落ちて記憶が無くなった。
以外にも全身麻酔は気持ち良く眠れ、
目が覚めると手術は無事終了していた。
好みの音楽は人それぞれですが、
自身の実験の結果、
手術前に音楽を聴くとかなり不安を和らげる効果がありました。
おそらく「手術前の何もしない時間」というのも不安を膨らませる原因なので、
何やかんやしていた方が良い意味で気が散っていいのかもしれませんね。
この話が、少しでも誰かの役に立てば嬉しいです。